2021年5月15日(土)
中日[0-5]ヤクルト(バンテリンドーム)
今年のヤクルトはデーゲームの分が悪いらしい。この試合が始まるまで0勝9敗3分と1つも勝てていなかった。オカルトのひとつではあるが、いろいろなところで囁かれ、呪いの象徴みたいに扱われていたので耳(目)にした人も多いはずだ。
その呪いを解いたのは”マダックス”小川だった。マダックスとは9回を100球未満で完封すること。MLBで通算355勝を記録し精密機械と呼ばれた名投手グレッグ・マダックスに由来する。
完封はもちろん、完投も少なくなってきた現代の野球で”マダックス”のハードルはとても高い。昨年、小川がノーヒットノーランを達成した試合の球数も135球。マダックスには程遠かった。調べてみると、ヤクルトでは2015年8月11日に山中浩史が達成して以来、誰も手が届かなかった偉業である。
今日の小川は序盤から快調なペースで飛ばし、5回終わったところでなんと54球。3回途中でノックアウトされた前回の球数55球よりも少ない。どこかの芸人さんが、「やればできる」とでも言いそうな投球内容。このあたりから、気づいた人は”マダックス”を意識し始めていたことだろう。
とはいえ、いきなり崩れるのがこれまでの小川である。そうじゃなければ今頃は大エースだ。油断はならないし、多くのヤクルトファンは心のどこかで半信半疑だったはずだ。ぼくもそう。しかし、この試合の小川は違った。
カウントを悪くして痛打される場面はほぼなかった。そもそも3ボールになったのが3回だけ。そこから安打を許したのは、福田永将に打たれた二塁打1本のみ。制球を乱す場面は見受けられなかった。最後の打者となった武田健吾を99球目で三振に仕留めるまで落ち着いていた。こんな小川ぼくは知らなかった。
この日もライアン小川という愛称の由来であるノーラン・ライアンばりの足を上げるフォームは健在。だが、中身は精密機械の”マダックス”だったのである。信じては裏切られ、信じなければいい方に裏切っていく。小川という投手はほんとうに掴みどころがない。だから打たれてもファンは離れず、ついていくのだろう。憎めない存在だ。願わくばもう少し安定してほしいけれども。
そんな小川は明日(5月16日)が「31」歳の誕生日だという。そしてマダックスは現役時代の多くを背番号「31」で過ごし、ブレーブスとカブスでは「31」が永久欠番になっている。
30歳から31歳になる小川がマダックスを達成したのは、偶然かもしれない。いや、偶然だろう。それでもデーゲームに勝てないといった呪いを信じてしまうぼくたちだ。今日の”マダックス”は、豪快なライアンではなく、精密機械のマダックスを目指せよ、という野球の神様からのお告げだった、と結びつけたっていい。
ライアン小川からマダックス小川になったら、ぼくは信じ続ける。
試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000345
※ヤクルト公式HPより
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