練習試合に見た沖縄らしさ

2月の沖縄はじんめり(※)とした日が多い。一方で晴れた日の暑さは東京の夏手前のようだ。照りつける太陽の熱は心地よいを通り越し熱く、たまに吹く風は恵みになる。

そんな熱を帯びた2月12日。ベイスターズのキャンプ地であり、アトムホームスタジアムからユニオンですからスタジアムに変わった宜野湾に足を運んだ。この日はドラゴンズとの練習試合。試合開始の前からたくさんのファンが往来している。天気の良い休日は賑やかだ。練習試合ともなればなおさらのことだろう。

試合開始1時間前にスタンドへ入りな三塁側端っこの席を確保した。独立してはおらずベンチのような座席で、徒歩5分ほどのスーパーで買った税込354円のタコライスを口にする。

グラウンドでは一軍キャンプの生き残りを賭けて、まだまだ実績の少ない選手たちが少ないチャンスをものにしようと必死にボールを追っている。

練習試合では先発ピッチャーが5回も6回も投げることはまずない。期待のホープや強化指定選手じゃななければバッターだって1回か2回の打席で終わることがほとんどだ。言うなればオープン戦という最終試験に進むための選抜試験。同じ非公式戦でも2月末から始まるオープン戦と雰囲気は違う。

グラウンドから視線を右にやると奥には海。イニング間に少し首を動かすだけで景色が変わる。ドーム球場のような看板、神宮球場のような都会のビル群、そして甲子園球場のような山でもなく海であることが沖縄らしさを感じさせてくれる。

ボールボーイも整備しているスタッフも場内アナウンスも公式戦とはやっぱり違う。9回裏が終わって試合終了のアナウンスが流れても最後の0がスコアボードに表示されなかった。ふだんからプロ野球の試合を担当しているわけではなく、もしかしたら慣れてない人なのかもしれない。気になることはあるにせよ、そこに目くじらを立てたりはしない。そういうものだ、と納得している。

スタンドにいるのは(県外から来たであろう)熱心なファンだけではない。ぼくのようなオタクもいる。さらにはトリスのミニボトルを座席の横に置き文庫本を読み、目をつむっている人もいる。鳴り物や登場曲、試合間の演出もない。ボールの音、選手と審判の声、そして手拍子。ほどよく心地よい音なのだろう。恵みの風もあり穏やかな寝顔がうっすらと見える。

わずか3時間ほどの練習試合だったけれども、沖縄らしさがたくさん詰まっていた。

※じんめり…辞書にはない。湿度が高くじんわりとジメッとした意味でぼくが使っている造語。

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