年間約500試合を【映像で】見て気がついたこと

冬の始まりは拍子抜けするほど暖かかった。掛け布団1枚でも何ら問題なく半袖でも寒くない。深夜3時に就寝──幕開けのニュースの第一報を確かめるべく起きていた──し普段はセットしないApple Watchのアラームより2分も早く目が覚めた。午前7時28分。今日は病院に行かねばならない。ぼくはこの夏に背骨を折った。その経過観察がある。

背骨を折ったから、というわけではないけれども今年のぼくは野球を現地で──見るといえば現地のことだと思っていたけどなんだか映像も含むらしい──見ることが大きく減った。いや意図的に減らしてみた。ひとつの実験だった。

2016年から2022年までの7シーズンに渡ってぼくは年間100試合くらいはNPBの試合を【現地で】見ていた。それが今年はエスコンフィールドの開幕戦をはじめとして15試合ほど。驚きの85%減。自由契約を選択することになってもおかしくないとんでもない減りようだ。

その理由はいくつかある。そのうちのひとつが【映像で】見るのはどういうものなのか、を知るためだった。他の理由ももちろんあるが、ここでは書かない。

今までも現地に行かない試合は、自宅でテレビやインターネット配信を利用して【映像で】見ていた。それでもメインは【現地で】見ることであり【映像で】見ることではなかった。

そんな思惑がありながら今シーズン【映像で】見たNPBの試合数はおよそ400試合。誇張でもなんでもなくこれくらいだ。1日に3試合を月間で22日ほど。大半が仕事上ではある。66試合を4月から9月までの6ヶ月続けたら396試合になる。ポストシーズンなど10月、11月の試合を含めると420試合くらいだろうか。

ちなみにMLBは大谷さんが出場する深夜帯を除くエンゼルス戦はほとんど【映像で】見た。そこにその他の試合を加算すると100試合くらいになる。日米合わせて520試合ほど。これが今シーズンの【映像で】見た試合数になる。

複数の試合を同時につけてはいるときに音声を出しているのは1試合のみ。日本シリーズのように1日1試合体制ではないわけだから、全場面を事細かに見ることはできていない。それでも大枠の流れはなんとなく理解している。試行錯誤の上に画面割りのコツを掴んだ。

それだけの試合を【映像で】見て気づいたのは、【現地で】見て知ったこと感じたことと【映像で】見て知ったこと、感じたことは全然別物なんだなということ。なにもかもがちがう。天と地ほど。

そこに優劣はないけれども【映像で】見たことを知ったように話して(伝えて)しまうのはとんでもなく恐ろしい。脳裏に刻まれた。いやどこか頭の片隅にあったものが呼び起こされた。

それは当事者でもなく研究しているわけでもないぼくが、昔のことを資料で知って、なんでも知っているかのように話して(伝えて)しまうようなもの。あるいは、訪れたこともないのにGoogle Earthで見たからといって、あたかもそこを訪問したかのように語ってしまうようなもの。やっぱり恐ろしい。

【映像で】見た、【現地で】見たを同列に語ってはいけないということ──これが実験の結果というよりも気づきだった。

もちろん、あらかじめ【映像で】見た、あるいは【現地で】見たことを面倒だったとしても──日本で生活している以上、アメリカにはそう頻繁に行くことはなからMLBのことはいいとしても──前置きして話す(伝える)ことができればなんの問題もない。

【映像で】見たからこその気づきもあった。優劣ではなく違い、がそこにはある。

病院から帰ってきてアイスコーヒーを注ぎ、淡々とこれを書いている。やっぱり半袖で十分だ。これは季節外れの暖かさだけじゃきっとない。