2021年8月25日(水)
ヤクルト[3-3]中日(静岡)
草薙球場は屋外球場のよさが詰まっていた。球場の周りに高い建造物がないからなのか空がとんでもなく広い。神宮球場とはちがった空。どこまでも広がる青と白が富士山をはじめとした山々と折り重なる。単なる屋根がない屋外球場ではない。季節によって顔が違う、たくさんの良さを持っているということが容易に想像がつく。
一流の野球選手に似ている。一流と呼ばれる選手は打つ、守る以外にも顔をもっているものだ。この日、見た青木宣親がまさに重なった。
打っては逆転のタイムリー。重苦しい雰囲気を打ち破る。石川雅規に勝利投手の権利が灯る。
守っては大ベテラン福留孝介の放ったむずかしい打球をスライディングキャッチ。初回に自身のあたりを福留にダイビングキャッチされた分のお返しと言わんばかりのスーパープレー。日米を沸かせたふたりが試合に華を添える。大きなホームランじゃなくても魅せた。ふたりの体内時計は止まっているのだろうか。
堂上直倫の二塁打性のあたりを二塁へ好返球。与田剛監督ののリクエストは実らず。ピンチを未然に防いだ。
打って守る。
ここまではよくあること。大きく騒ぐことでもない。だが青木にはその続きがある。
試合終盤。ライトの渡邉大樹がフェンスに激突しながらファールフライをグラブに収めた。ここのフェンスは見るからに硬そうだ。それでもボールは離さない。サンタナの1打席を渡邉のワンプレート引き換えた高津臣吾監督の名采配。これぞ守備固め。球場のどよめきとと同時にレフトの青木はキャップを取って渡邉を讃えた。少し毛が伸びてきた頭が眩しい。
ここまでもよくあること。味方のファインプレーへ賛辞を送るのはチームメートならある意味当然のことかもしれない。
でも青木にはさらに続きがある。
試合終了まであとひとりのところでマクガフがまさかの暴投。1点を失ったと同時に守ってきた、繋いできた石川の勝利投手の権利が消えた。
3つ目のアウトを奪って引き上げてくる消沈したマクガフを迎え入れたのは内川聖一と青木だった。他にもベンチには選手がいる。それでも内川と青木のふたりがまっさきにマクガフと触れるのはベテランたる所以なんだろう。
味方の失敗も受け入れ孤立させないような配慮。それを自然とできるのが一流選手だ。
打って、守って、讃えて、迎え入れる。
ただ結果を残すだけの選手ではない。たくさんの良さが青木にはある。
試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000685
※ヤクルト公式HPより