2021年9月15日(水)
ヤクルト[1-0]阪神(神宮)
今シーズン初のスミ1完封勝利はヒッターズパークの代名詞でもある本拠地・神宮球場で成し遂げられた。
4番・村上宗隆のタイムリーで挙げた虎の子の1点をエース・小川泰弘、セットアッパー・清水昇、守護神・マクガフの3人が守りきった。ちょうど2日前にバンテリンドームでやられたことをやり返した。相手チームは違ったのはこの際、置いておく。せめて2点取って「倍返し」にしたかったが、相手も首位を走るチーム。なかなかうまくはいかない。
危なげない、とは言えない試合展開だった。熱く盛り上がったシーンは数え切れない。ピンチでの奪三振にスーパーキャッチ、盗塁刺に併殺奪取──。とくにこの2試合は二遊間が安定している。西浦直亨、元山飛優、宮本丈、山田哲人の4人がスタメン出場し全員がみごとな併殺を奪ってみせた。
そしてもうひとつ。7回の攻撃では熱く盛り上がるどころかファン(ぼく)は鳥肌が立った。打順は6番から。走者が出れば7回を投げ終えた小川に打順が回る。ブルペンでは清水昇が肩を作り始めた。通常、このタイミングでのブルペン始動は、次の回の頭から投げ始めることを意味する。
7回無失点92球。なんの文句もつけようがない小川の快投は希望だった。ここ数試合は打ち込まれ、「エースは奥川恭伸だな」という声も増えた。それを一掃した。ここで退いてもだれも文句は言わない。
1死から7番の西浦直亨がヒットで出塁し、打席には古賀優大が入る。球場の視線はネクストに集中する。おもむろにバットを回すのは川端慎吾だった。ゲッツーでなければ切り札で2点目を奪いにいく。なんの不思議もない。むしろ水が流れるかのように自然でもある。
打席の古賀から快音は聞こえなかったが、ランエンドヒットで2死二塁と走者を進めることはできた。満を持して「悲しみなんて笑い飛ばせ」が流れ…なかった。
送ることができなかったわけではない。最高の形ではないにせよ得点圏に走者を進めた。それでも打席にはヘルメットをかぶった小川が小走りで向かった。と同時にブルペンの清水は投球練習をやめた。
ブルペンとネクストを使っての陽動作戦。阪神ベンチはどう感じたのだろう。川端を封じ込め、8回からの清水、マクガフをどう攻略するかを考え戦略を練っていたはずだ。それが無になった。ファン(ぼく)は鳥肌が立った。
このあと小川は決死の内野安打で出塁し、塩見泰隆はフルカウントから高めのストレートで空振り三振を喫している。あまり結果は重要じゃなかった。いや重要だけれども、それ以上に球場全体を使った高津臣吾監督の最高級の演出に魅せられていた。
試合後の小川のコメントを見るに7回を終えた時点で監督から完封の指令がでていたという。7回というのは投げ終えたところなのか、攻撃を終えたところなのかは定かではない。
もし、投げ終えたあと、であればブルペンでの清水の投球練習もネクストに川端が入ったのも、最初から計算されたフェイクだったということになる。
高津監督や小川がコメントしない限り答えはわからない。この際わからなくてもいい。わからないほうがいい。想像する余地があるからこそおもしろい。計算できないことがない野球なんてつまらない。
心地の良い騙され方。だんだんベンチもしたたかになってきた。やっぱり野球は奥深い。
試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021004882
※ヤクルト公式HPより
記事参考:https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2021/09/15/kiji/20210915s00001173588000c.html
※小川コメント