2021年9月19日(日)
ヤクルト[5-1]広島(神宮)
薄紅色の空へ飛び込んだ。ライトの鈴木誠也が一歩も動かない。振り向くことすらしない完璧なあたり。
群青色の空へ飛び込んだ。ライトの鈴木誠也がフェンスまで打球を追った。戦列のデビューから3年と3日。
村上宗隆の記念すべき第100号ホームランは芸術そのもの。史上最年少という肩書きがなくても記憶に残る一撃だった。
前日の最終打席では空振り三振に倒れていた。初ホームランの前には派手なエラーでやらかした。Tha past is the past──過去は過去──と開き直らんばかりの豪快な一打。どちらも新しい1日の始まりである第1打席に決めてみせるのが村上らしい。
いつだって村上に対するファン(ぼく)の期待は満タンだ。三振したってエラーしたって打つべきところで打ち、チームを勝利に導く。それを初めて経験する優勝争いの中でやってのける21歳。イチローや大谷翔平のような衝撃に近い。比較対象が王貞治や清原和博、中西太と球界を創り上げてきたレジェンドたちばかり。思い返すと山田哲人がトリプルスリーを達成した時も名前が出てきた中西太はとんでもない存在だ。期待するなという方がむずかしい。
プロ野球界に激震を走らせる選手は数えるほどしかいない。一時的な爆発はあっても、そのほとんどが花火のように弾け散ってしまう。鍛錬に鍛錬を重ね、何度も何度でも底から這い上がってきたものだけがたどり着ける境地に村上が立とうとしている。
ヒーローインタビューでは王と比べられ「(王さんと比べて)まだまだ実績がない」と答えた。そりゃそうだ。プロ野球の歴史を見ても王と比べられるほどの実績を誇るのはイチローくらい。それでももしかして村上なら…とそんな期待を抱かせてくれる。ヤクルトだけではなく球界をそして日本を背負ってたつことになっても驚かない。そんな選手の成長を目の当たりにしているファン(ぼく)は幸運だ。
青木宣親の珍しい弾道の一発、塩見泰隆の猛打賞、山崎晃大朗の犠打やバックアップ、渡邉大樹の好返球、原樹理の粘投、綱渡りながら無失点に抑えた救援陣……。なによりも優勝争いのさなかで試合に勝った。たくさんの見どころがあった。
そのすべてを凌駕し村上の一振りがすべてを持っていく。今日はそれでいい。
引き上げていく選手たちの笑顔が多かった。惜しみない拍手を送るファンも笑顔だった。勝利は、村上の一打はすべてを笑顔に変える。
試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000801
※ヤクルト公式HPより
記事参考:https://www.nikkansports.com/baseball/news/202109190001481.html
※村上宗隆ヒーローインタビュー