2022年8月10日(水)
広島[4-1]ヤクルト(マツダスタジアム)
戦う顔をしていた。
4点ビハインドの8回、1死二、三塁で青木は犠飛を放った。いつの頃からか犠飛は”最低限”と呼ばれるようになった。たしかに最低限なのかもしれない。アウトカウントが1つ増えたけれども得点になったのだから。
でもこの場面でルーキーならいざしらず、ベテランでありチームの精神的支柱でもある青木に求められていたのは犠飛ではない。タイムリーだった。誰よりも青木がそれを感じていたはずだ。だからこの結果に1ミリも喜んでいないはず。ファン(ぼく)も喜べなかった。”最低限”なんて1ミリも思わなかった。思ってほしくなかった。
この時、相手の内野守備は前進守備を敷かずに通常だった。”1点OK”。つまり1点は与えてもアウトカウントを増やしましょう、ということだ。言ってしまえば青木は内野ゴロを放ったのと同じなのである。もしかしたら引っ張っての一ゴロ、二ゴロなら1点を奪って、さらに二塁走者が進塁していた可能性もある。”この場面においては”犠飛は最低限でもなんでもなかった。
青木も痛いほどわかっているはずだ。でも、もしかしたら打点を挙げたことで喜んでいるのかもしれないな。それだったら複雑だな、ここで笑顔を見せていたら危ないかもしれないな。そんなことすら思った。
杞憂だった。犠飛を放った直後、カメラに抜かれた青木の顔に笑顔はない。
この顔を見た時にほっとした。この青木という男はこの場面で犠飛を放っても決して満足していないんだ。それが画面越しからも強く伝わってきた。よかった。
この日、青木は2打数2安打1四球1犠飛と結果を出した。そして最後の打席の直後に強く戦う顔を見せた。らしくない成績が続いているのは事実。でも、まだこの男の気持ちは折れていない。
それがファン(ぼく)にとって、この夜一番の収穫だった。
試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021006066
※ヤクルト公式HPより