奥川恭伸と若燕たちが見せた679日分の進化 | ヤクルトが好き

神宮球場

2021年7月1日(木)
阪神[1-6]ヤクルト(甲子園)

星稜高の背番号「1」として散った履正社高戦から679日。ヤクルトの背番号「11」として奥川恭伸が甲子園のマウンドに帰ってきた。

灼熱の太陽の下ではなく降りしきる雨の中で7回を投げ、奪った三振はあのときと同じ6個。打たれたホームランもあのときと同じ1本だった。

あのときのように試合を1人で投げ抜くことはできなかったけれども試合には勝った。敗れても笑顔を見せていた奥川が勝利で喜んだ。同じ笑顔でもうちに秘めたる感情はきっと違うはずだ。

0-1と1点ビハインドの状況で同点ホームランを放ったのは山田哲人だった。頼れるキャプテンはここぞで魅せてくれる。

同点の9回に繋ぎに繋いで迎えた2死満塁のチャンスで160キロのストレートを弾き返したのは宮本丈だった。2015年の川端慎吾が乗り移ったかのようなポテンヒットが、苦しい状況のチームを勝ち越しに導いた。

運命なのか偶然なのか。山田も宮本も奥川が甲子園で敗れた履正社高の出身である。3人の世代は違えど、「昨日の敵は今日の友」。そんな心境に陥ったファン(ぼく)もいる。甲子園の決勝という大舞台で雌雄を決し、敗れた高校の選手に助けられたドラマは何よりも美しい。

この日、奥川は白星を掴むことはできなかったけれども、プロの世界でも十分にやれるという679日分の進化を存分に見せてくれた。5年後にはエース、ではなく後半戦にはエースそれくらいのスピード感がある。

その奥川が甲子園の決勝で敗れた2019年8月22日に戸田球場ではヤクルト対DeNA(二軍)の試合が行われていた。

この試合のボックススコアは興味深い。「2番・右翼」の塩見泰隆が3安打3打点。「6番・遊撃」の吉田大成は2安打2打点。「7番・二塁」の宮本は2安打。途中出場の渡邉大樹も2安打1打点。そして勝利投手は先発を目指していた清水昇だった。

679日の時を経て進化したのは奥川だけではなかった。前日の試合では清水が涙の初勝利を飾り、宮本が殊勲打を放った。吉田大成は代打で四球をもぎ取り遊撃の守備にもついた。塩見もダメ押しのタイムリーを放っている。渡邉だってサンタナの代走から守備に入り試合後半のピースとなった。

奥川が44000人、そして日本中の注目を集める中、遠く離れた戸田の地ではわずか170人の観客の前で汗を流していた若燕たちが立派な燕になった。

679日という時間はあっという間だけれども、短くはない。進化を遂げるには十分な時間がある。それぞれがそれぞれに進化したことを証明してくれた。

試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000561
※ヤクルト公式HPより

2019年8月22日の二軍戦:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/stats/2019082292
※ヤクルト公式HPより

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