2021年9月4日(土)
ヤクルト[2-4]広島(東京ドーム)
十年一昔というからには2011年のことは昔のことなのだろう。4月下旬に首位に立ったものの、最後に落合中日にまくられたあの年。青木宣親がMLB挑戦へ向けて退団したあの年。CSで山田哲人がデビューしたあの年。いろいろなできごとを振り返ってみるとたしかに昔だ。
落合監督はすでにユニフォームを脱いでから10年が経った。青木はMLBで6年間プレーした後、ヤクルトへ復帰し4年目のシーズンに入った。山田はキャプテンに就任し、球界を代表する選手となった。
2011年を思い出したのは落合監督の言葉からだ。5月のある試合に敗れた後、落合監督は言った。
「あと50は負けられるな。その間になんぼ勝つかだな」
多くの監督が優勝へ向け、全部勝つとかあといくつ勝つことを口にするなかのこの発言。ふつうじゃない。
この試合はちょうど11敗目であり、シーズン終了後の中日は59敗。2位のヤクルトも59敗で2.5ゲーム差。優勝ラインを61敗と考えた上での発言だったのだろう。
<2011年セ・リーグ>
1位:中日 75勝59敗10分 勝率.560
2位:ヤクルト 70勝59敗15分 勝率.543
2.5ゲーム差。
プロ野球の世界でサッカーの強豪チームのようにリーグ戦を無敗やそれに近い形で終えることはありえない。優勝チームの勝率は6割前後。3連戦を2勝1敗ペースで勝ち進んだときの勝率.667を超えることもほとんどない。
1971年から2020年までの50年間のセ・リーグでこの勝率を超えたのは1990年の藤田・巨人と2012年の原・巨人の2回だけ。落合監督のようにあからさまに口にしなくても、どのチームだって星勘定は確実にしている。
今のヤクルトもそうだ。高津臣吾監督は残りの45試合をどう戦うか。ということを練りに練っている。そのなかでこの試合は「負けられる試合」だったのだろう。
ナイターからデーゲームとなる疲労。勝ちパターンである今野龍太、清水昇、マクガフが連投中。その他にもいろいろな要素があるとはいえ、スタメンから青木宣親と中村悠平を外し、オスナの2番を試した。西浦直亨と坂口智隆にはひさしぶりのスタメン起用の機会を与えている。
試合には敗れた。けれども勝ちパターンは休み、青木は代打、中村も守備の1イニングだけの出場と負担は減った。オスナは2安打、坂口と西浦も1安打。西浦は3つの四球を選んで4打席連続出塁を果たした。
西浦は試合終盤から三塁の守備につき、村上宗隆が一塁に回った。前日にも見せた形だが、守備に不安のあるオスナへの守備固めに荒木貴裕とはちがうパターンが生まれた。
高津ヤクルトは、「あといくつ負けられる」の星勘定の中で勝つための準備を行った、そんな試合に映る。ただでは負けない。
こういう試合も背景を想像すると味わい深くなる。
10年前はまくられた。昔を一掃する。今度はヤクルトがまくる番だ。
試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000734
※ヤクルト公式HPより
記事参考:https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2011/05/08/kiji/K20110508000778630.html
※落合監督コメント