2021年9月18日(土)
巨人[6-6]ヤクルト(東京ドーム)
塩見泰隆が敵地東京ドームで跳ねた。ヤクルトでは2018年の山田哲人以来となるサイクル安打を達成。勝つことはできなかったけれども、メディアでの扱いを大きくさせた立役者になった。
振り返ってみるとサイクル安打を現地で見たことはなかった。山田の達成は地方静岡であり、その前の達成者である稲葉篤紀は2003年に、これまた地方の松本で記録していた。神宮球場での達成は1992年のハウエルが最後。見たことないはずだ。
被サイクルの方も1997年に横浜スタジアムでローズに喰らったのが最後。およそ四半世紀に渡ってサイクル安打を許していない。それより前をさかのぼってみてもヤクルトが神宮球場でサイクル安打を被ったことは一度もない。
ヤクルト(前身球団含む)のサイクル安打達成者を見ると、錚々たる名前が並ぶ。町田行彦(1958年)、若松勉(1976年)、池山隆寛(1990年)、ハウエル(1992年)、稲葉篤紀(ヤクルト)、山田哲人(2018年)。
国鉄時代の主力選手である町田は球団史上初のホームラン王(1955年)に輝いた選手。背番号の変遷も強烈だ。ヤクルトでは27→7→5と背負った。古田敦也の田中浩康の川端慎吾の大先輩にあたる。
ミスタースワローズの若松、池山、山田の3人は言わずもがな。ハウエルは1992年・1993年のリーグ連覇には欠かせなかった主力外国人選手。来日1年目でホームラン王と首位打者の二冠に加えMVP。まさに神。そして稲葉もヤクルト時代にベストナインを受賞し、日本ハムへ移籍後に首位打者を獲得した。
まさに「ヤクルト×サイクル安打」は一流選手の証でもある。
他球団を含めた歴代の達成者には柳田悠岐(ソフトバンク)、福留孝介(阪神)、小笠原道大(巨人)、松井稼頭央(西武)と強打者たちが名を連ねる。一方でタイトルとは無縁の存在も見受けられ、単純な力だけではなし得ない。長嶋茂雄(巨人)もイチロー(オリックス)も達成できなかった。
サイクル安打はホームランを打てるパワー、そしてスリーベースをもぎ取るスピードの両方が必要なのは明らかだが、そしてなによりも「運」が必要になる。
塩見の身体能力は高く、フィジカルモンスターとも呼ばれている。でも山田哲人のように最高級のパワーとスピードを兼ね備えているかというとそこまでではない。村上宗隆のような圧倒的な存在感があるかというとない。青木宣親のような強烈なリーダーシップがあるかというとそれもない。それでもサイクル安打を達成した運がある。それも優勝を争う上で落とせない大事な大事な試合で解き放った。
競馬では牡馬三冠と呼ばれるレースがある。三冠馬は歴代で8頭しか生まれていない。プロ野球の打撃三冠が7人だから同等とも言える(競馬は生涯一度しかチャレンジできないが)ほどの難易度だ。
その第一弾である皐月賞は「もっとも速い馬」、第二弾の日本ダービーは「もっとも幸運に恵まれた馬」、第三段弾の菊花賞は「もっとも強い馬」がそれぞれ勝つと言われている。競馬でもっとも格式の高い日本ダービーを勝つには運が必要なのだ。
野球でも同様だ。リーグ優勝を成し遂げるには、実力以外の運も大きく左右する。試合日程、相手先発との相性、選手たちのコンディション……
その大事な運を持っている塩見の存在は心強い。
試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000795
※ヤクルト公式HPより