2021年10月15日(金)
ヤクルト[8-7]巨人(神宮)
バンテリンドームで耐え忍んだのが報われた。
週の前半にバンテリンドームで行われた3試合の合計スコアは6-5だった。飛び出したホームランはヤクルトが3本、中日が0本の合計3本。
投手の踏ん張りなのか、球場の特性によるものなのかはわからないけれども、1試合平均で2点しか取れず、ホームランは1本ずつと少し寂しかった。
それがどうだろう。東京の空気は美味しいのか4本のホームランが飛び出し8得点。3本のホームランを浴び7点を失ったのはご愛嬌(と軽々しく言える失点数ではないが)。序盤の失点から劣勢を跳ね返して逆転で勝利を収めた。
野手陣にヒーローはたくさんいた。
インパクトの瞬間からフォロースルー、確信後に見せたポーズから走り出しの瞬間まですべてが完璧だったオスナの逆転アーチ。それまでの打席で凡退していた借りを返したオスナ。
2ホームランを含む4安打のおおあたりに緩慢守備とハラハラドキドキの連続だったサンタナ。コマのような回転で”らしい”ホームランを魅せた青木宣親……。
数え上げればきりがない。
だけれども7失点という結果から察せるように投手たちは苦しんだ。高梨裕稔は初回から被弾し、今野龍太、清水昇の勝ちパターンもともに失点。火消しで存在感を現していた大西広樹も点を与えた。
そのなかで守護神のマクガフとともに無失点だったのが大下佑馬だ。この日の大下は忙しかった。初回からブルペンに入り7回の出番までに都合5回も肩を作っている。
よく報道や書き込みでヤクルトはブルペンでの管理がなされており、複数回のブルペン入りはない、と書かれているが大きな誤りだ。優勝を争う展開だからではなく、日常的に行われている。出番の決まっていない投手はよく投げてよく投げる。
序盤の展開から大下の出番はいつ来てもおかしくはなかった。それでも同点で7回に入り今野龍太がマウンドに登ったとなれば、今日の出番はなしと考えても不思議ではない。試合中に集中を切らすことはないにせよ、少しホッとした気持ちになった可能性はある。
それをものともしなかった5度の肩作りからビハインドでの緊急登板。。今野が失点しビハインドの展開になったことから急遽マウンドに上った大下は、ウィーラーをピッチャーゴロに仕留めマウンドを降りていく。
報われてほしい、願ったファン(ぼく)の祈りが通じたのかその裏にオスナの一撃が飛び出し、なんと大下が勝ち投手となった。
勝ちパターンではない大下が勝ちやホールド、セーブといった目に見える形で報われることは少ない。今シーズン28試合目の登板でこれが初勝利であり、ホールドも1個しかないことからよくわかる。なかなか評価されにくい役割なのはしょうがない。
それでも、「準備をすれば必ず報われるわけではない。それでも準備しない人が報われることはない」ということを現してくれた。
ヒーローインタビューに呼ばれることはなく、その他大勢の選手たちと扱いは一緒だった。後からボックススコアを振り返ってみても、逆転する手前にたまたま投げていた、と読み取られてしまう。
それでもこの試合のブルペンを見ていたファン(ぼく)は大下の準備を知っている。
背番号の変更からサイドスロー転向。崖っぷちだった男の準備が報われたことは心に刻まれている。
試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000932
※ヤクルト公式HPより