2021年9月2日(木)
巨人[2-2]ヤクルト(京セラドーム大阪)
一般的に野球選手の衰えは目と足(スピード)から始まると言われている。動体視力が落ち今まで見えていたものが見えなく、あるいは見えにくくなる。瞬発力が落ちることでコンマ何秒遅れを取ってしまう。
ロボットではなく人間がプレーしている以上、老化現象に抗うことはできない。トレーニングによって遅らせることはできても完全に若い状態を保つことは不可能だ。
50歳までやりたいと公言していた、あのイチローでさえ克服できず45歳(10月に46歳)のシーズン開幕戦で現役生活に別れを告げた。
衰え知らずだと思っていた青木宣親の様子がおかしい。日米通算2500安打を記録した宮崎が生んだバットマン。38歳の昨シーズンも打率.317と驚異的な数字を残し、守備では無失策と攻守で存在感を発揮していた。仲間を鼓舞するリーダーシップもあり、全てにおいてチームを引っ張ってきたことは疑う余地がない。
そんな青木が今シーズンは苦しんでいる。2割6分という打率以上に出塁率が3割3分3厘「しかない」のは気にかかる。打席数に対する四球の割合を表すBB%は昨シーズンの14.6%から大きく下がった8.4%。四球を選べていない。空振り率などを見る限り、ボールとストライクの見極めがうまくできていないようだ。
もちろん打順の巡りもある。後ろに山田哲人と村上宗隆が控えていれば相手は青木と勝負を選択する。それにしても……。
そして足。今シーズンはここまで盗塁0、盗塁死も0だがこの数が減ったというのは気にならない。
試合中のワンプレーワンプレーが気にかかるのだ。この試合でも少し前の青木ならセーフであったであろうショートゴロがリクエストをするまでもなくアウトになった。坂本勇人の逆シングルからの送球、ツーバウンドになった難しいそれをうまく捕球した中田翔のグラブさばきはうまかった。それにしても……。
つい先日も走者青木が1試合に二度走塁死をした試合があった。ファン(ぼく)の知り得ない故障やアクシデントの可能性も否定できないが、福地寿樹三塁コーチも含めた全員の予測よりも速いスピードで足の衰えは進んでいるのかもしれない。
数字やプレーを見る限り青木といえども目と足の衰えが隠せていないことが如実に顕れている。これから先、どのような幕引きをするのか、ということも頭をよぎる。
でもちょっと待ってほしい。投手と野手の違いこそあれど、終わったと見せかけて復活した先人・石川雅規がヤクルトにはいる。
石川も37歳のシーズンに4勝14敗、防御率5.11と苦しんだが、その後2年連続で勝ち越し持ち直した。40歳の昨シーズンは2勝8敗、防御率4.48とさすがにもう無理なのでは…。という成績だった。
それでも蘇り、41歳の今シーズンは開幕一軍こそのがしたものの9試合の登板で3勝2敗、防御率2.40と抜群の数字を残している。この試合でも巨人相手に6回1失点と堂々の投球を見せた。
そんな石川は何回もの苦しい時期をヤクルトで乗り越えてきた。今の青木は成績的にも体力的にもヤクルトでは初めてといってもいい苦しい時期に差し掛かっている。チームで見れば山田や村上が打って守れば青木の成績面での衰えをカバーすることはできるかもしれない。でもそれは青木個人の復活とは違う。
石川と青木は電話をする仲だという。今シーズンも石川が二軍にいる時、青木が連絡をしていたという話があった。人間だからこそ、ベテランだからこそわかる苦しみを乗り越えるために、今度は石川が青木を救う電話をかける番。苦しむ青木を蘇らせるには石川が必要だ。
ふたりの幕引きにはまだ少し早い。
試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000723
※ヤクルト公式HPより
記事参考:https://www.sanspo.com/article/20210902-QR5TXXR3PBPGBBZ22IB6PRHN6U/
※青木宣親と石川雅規の電話