2021年10月16日(土)
ヤクルト[3-5]中日(神宮)
試合に敗れた事実はあっさりと受け入れることができた。勝つときもあれば負けるときもある。日本のプロ野球では強いチームでも勝率は6割ほど。10試合やれば4試合は負ける計算だ。
一時的な連勝や連敗はあっても負ける試合はある。長年、プロ野球を見ていればそれくらいは理解している。
あと一本が出ないどころか併殺でチャンスを潰し、失点員は結びつかなかったけれどもエラーが出た。ま、こんな試合もある。そう振り払った。
それでも振り払うことができず、まとわりつく気がかりなことがあった。
この試合で中日は根尾昂、石垣雅海の二遊間コンビをスタメンで起用してきた。ライトに目を移せば岡林勇希もいる。若干の年齢の違いはあれど、ヤクルトでいうと長岡秀樹と武岡龍世、そして濱田太貴が揃ってスタメンで出場するようなもの。
若い選手に少しでも経験を。すでに退任が報道されている与田剛監督の親心なのか本部の意向なのかは知る由もないが、フレッシュなメンバーがスタメンに名を連ねていた。
ヤクルト先発の石川雅規とはまさに親子のような年齢差。フレッシュな若手にプロの厳しさ、一軍の厳しさを教えるには絶好の機会だった。きみたち一軍の世界は甘くないぞ、と。
現実はそうならなかった。勝負どころで根尾には同点タイムリーを打たれ、岡林にも2安打を許した。
これからはぼくらの時代ですよ、と言わんばかりのあたりに大きな寂しさを覚える。中日ファンの大歓声とヤクルトファンの大きなため息が脳内で入り交じる。
若い選手がベテランに引導を渡すのは珍しくない。あのとき打たれたから引退を決意した、なんて話はそこら中に転がっている。
5回を投げ切ることができず、あと一人からアウトを奪えずマウンドからゆっくりと降りていく石川の姿はこころなしか小さく見えた。
優勝を目指すチームのなかで仕事を果たすことができなかった悔しさはあれど、引退を決意した男の歩みには全く見えなかった。
野球界の世代交代に抗う石川は、今日のことは今日のことで受け入れ、「次はどう抑えようか、いや、まずはこの試合の応援だな」そんなことを考えている、きっと。
霧は晴れた。
試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000937
※ヤクルト公式HPより