2021年5月5日(水)
ヤクルト[2-2]阪神(神宮)
日本にやってくる外国人選手が成功する要素はいくつかある。実力があるのはもちろんのことだが、それ以外にも日本(文化や野球)に適応することであったり、まじめさや素直さといった野球の能力以外の部分も大きい。
毎年、評論家たちが自分の現役時代の同僚だった外国人選手を振り返りながら、そういったことを話している。仮に望まれた成績を残せなかったとしても、まじめであり、なおかつ笑顔を振りまいていればファンからは支持されやすい。思い返せば、日常生活でもそうだろう。笑顔を絶やさない人のほうが仏頂面な人よりも愛されやすい。
さて、今年のヤクルトには4人の新外国人選手が加入した。入国してからの隔離や調整もあり一軍で出場しているのは、オスナとサンタナのふたりだけ。両選手とも一軍で50打席にも立っていないから実力は未知数であり、現時点で判断することはできない。
とはいえなんとなくだけど、「オスナのほうがやりそう」というファンや評論家の評価が出つつある。先日の中日戦ではR.マルティネスから強烈なサヨナラ打を放ったし、打率.282でOPS(出塁率+打率)は.804と数字の見栄えも悪くない。打順もサンタナより前だ。三塁を守ったときの送球難はあれど、内野ゴロでも全力疾走する必死さは胸を打つものがある。
一方のサンタナの成績は可もなく不可もなく──本塁打を期待できる長打力はあるけれど、守備を含めると不可よりの可といった評価を下す人がいてもおいかしくないが──といったところだろうか。たしかにそうなんだけれども、より愛されるのはサンタナではないのかな、とぼくは思っている。
サンタナの守備は決してうまくない。太っているわけではないのだが、なんとなく動きがもっさりとしている。あと数歩、いや一歩前に出れば捕れたんじゃないの? と思う打球も正直あった。一度だけではなく、何度も。10試合しか出ていないのに。
サンタナの守っている右方向に打球が飛ぶごとに冷や汗をかくファンは、全国でぼくだけじゃないだろう。投手陣はもちろん、首脳陣はもっと冷や汗をかいているのではないだろうか。そんな心配までもしてしまう。
でもなぜか憎めない。なんとなくだけれども手を抜いているようには見えないから。カバーにも入るし、右中間のあたりもちゃんと追いかける。なんだか一生懸命さが伝わってくるからだ。それが画面越しであっても。ぼくはちょろい。
今日の1回に糸原健斗が右中間へのライナー性の打球を放った。中堅を守っていた山崎晃大朗がナイスキャッチしたのだが、サンタナもしっかり追いかけていた。山崎の捕球後には笑顔も見せている。”サンタナスマイル”これはずるい。自分で打球を捕るときも丁寧だ。(プロにとっては)イージーな平凡なフライやライナーでもグローブに手を添えて両手で掴む。片手で捕る選手が多い中、基本に忠実なのである。そういえばエスコバーも両手だった。
打席でもサンタナスマイルは健在だ。第1打席では三塁側にボテボテのファールを打ったのだが、バットが捉えた直後、サンタナはライト方向を見上げていた。ちょっとしてから苦笑い。「あ、打球はそっちじゃない」と悟ったかのように。実況、解説もそれに触れていた。
一生懸命で基本に忠実。それでいて笑顔を絶やさない。去年のエスコバーがそうだった。残念ながら契約を更新するような目覚ましい活躍を見せることはできなかったかもしれない。というよりできなかった。それでもファンには愛されていたと思う。片手に紙コップを持って笑顔で球場入りする姿はきっと忘れない。
サンタナも日本で愛される要素をいくつも持っている、それに気がついた来日10試合目だった。成績が伴ってくれれば言うことはない。
【2021年シーズン成績】
サンタナ
10試合/打率.212(33打数7安打)/3本塁打/4打点/12三振
オスナ
10試合/打率.282(39打数11安打)/1本塁打/5打点/3三振
※2021年5月5日終了時点
試合結果 https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000301
※ヤクルト公式HPより