ヤクルト廣岡大志の勝負は4年目までだった

2021年3月1日に廣岡大志(ヤクルト)と田口麗斗(巨人)のトレードが成立した。春季キャンプが終了した直後という時期、同一リーグ間、双方が主力クラス、年俸の格差……と複数の要素が絡み合ったこともあり大きな話題となった。

それに伴ってSNSでは、両選手の実績やチームの状況、年齢など様々なポイントに書き手それぞれの思いや考察を上乗せしたファンの声が拡散されている。誹謗中傷を除けば、ファンが思い思いの発信をすることは野球の楽しみ方のひとつでもある。それに便乗して廣岡という選手のことを違う切り口で書いてみたい。

◎甲子園で岸潤一郎から本塁打

廣岡は2015年ドラフト2位で指名され、智弁学園高からヤクルトへ入団した右打ちの内野手だ。甲子園制覇や高校通算◎◎本塁打といった華々しい記録は持ち合わせていない。それでも素質が高く評価され2位指名という高評価だった。

この年のドラフトでは1位でオコエ瑠偉(関東一高→楽天)と平沢大河(仙台育英高→ロッテ)と2人の高卒野手が指名されている。2位指名の高卒野手は廣岡だけであり、全体で3番目の評価だったとも言える。

高校時代の廣岡は1学年上の岡本和真(現巨人)とともに2014年春・夏と2回甲子園に出場した。遊撃手としてのイメージが強いかもしれないが、甲子園に出場した2年時のポジションは右翼と三塁である。

2度の甲子園では1本塁打を含む4安打を放っており、その一発は明徳義塾高の岸潤一郎(現西武)から。また佐野日大高の田嶋大樹(現オリックス)からも二塁打を記録している。後にプロ入りすることになる好投手(岸は紆余曲折ありプロ入りは野手だが…)たちから、長打を重ねていたのである。

◎過去、高卒生え抜き大砲候補は4年目までにレギュラー定着

ヤクルト入団時に与えられた背番号は「36」だった。ヤクルトの「36」は「ブンブン丸」の愛称で親しまれた池山隆寛(現二軍監督)や川端慎吾が背負ってきた番号であり、廣岡に対する期待のほどはよくわかる。

廣岡に対して大きな期待を抱いたのは首脳陣だけではない。多くのファンが、和製大砲候補として、池山隆寛二世として、山田哲人二世として、そしてロマン砲として廣岡にそれぞれの思いを乗せていた。

だが現実はそう甘くない。早い時期から一軍で起用されるも、ドラフト2位の大砲候補として周囲を納得させる──それこそ村上や山田のような──結果を残すことができなかった。

もちろん高卒5年目までに2桁本塁打(4年目に10本塁打)を記録するというのは大変なことであり、通常の高卒選手なら万々歳だろう。弾道も美しかった。でも、求められていた姿は、「池山隆寛二世」であり「山田哲人二世」である。並ではなかった。

ヤクルトにおいて生え抜きの高卒選手で30本塁打を記録した選手は町田行彦、杉浦享、池山隆寛、岩村明憲、山田哲人、村上宗隆と過去6人(村上は廣岡より後だが)いた。そのなかで杉浦を除く5人が4年目までに規定打席に到達し、レギュラーを獲得している。ちなみに唯一レギュラー獲得の遅かった杉浦(初の規定打席到達は8年目)は入団時に投手だったという事情がある。

廣岡には他の選手との兼ね合いもあり、ポジションを固定できなかった不運があったかもしれない。でも本当に池山や山田クラスのポテンシャルを秘めているのであれば、早い段階から結果を残すことで、レギュラーを勝ち取らなければならなかった。

生え抜きの高卒選手で30本塁打以上を記録している先人たちを見ても、首脳陣の我慢はあるにせよ、競争を勝ち抜くことで、若くしてレギュラーを奪ってきたのだから。

◎巨人では一からの勝負

移籍先である巨人ではどのような起用法になるのかは現時点でわからず、誰が競争相手なのか明らかではない。

遊撃であれば坂本勇人になり、三塁であれば岡本和真になる。簡単にレギュラーを狙います、と言える相手ではない。

しかし2020年シーズンに廣岡はメインである三遊間だけではなく、一塁、二塁、そして外野でも起用された。試合前のシートノックでも両翼のあとに内野の守備位置についている。それでも慣れないポジションを守っているからか、二塁や外野の守備は拙かったことは否めない。

二塁では堅実というよりアクロバティックな動きで驚かせ、右翼ではカバーやバックアップに入らなかった(もしくは圧倒的に遅かった)姿が印象に残っている。それでもときおり見せる外野からの返球は力強かった。

外国人選手の来日が不透明である現在、一塁なら中島宏之やウィーラーといった実績者に新星・秋広優人、二塁なら吉川尚輝に北村拓巳、外野や右の代打なら石川慎吾や陽岱鋼との争いだ。大砲候補としてどんと構えるのか、それともバイプレーヤーとして生きていくのか。

どんな起用法であれ、一から勝負し直すことになる。5年間背負ってきた幻想から解き放たれたことで──ヤクルトファンとしては残念だけれども──案外覚醒することになるかもしれないな、と思ってしまう自分もどこかにいる。

なにはともあれ”New”廣岡大志に期待したい。

<廣岡大志成績>

[20年]87試合 打率.215(121打数26安打) 8本塁打 15打点
[通算]236試合 打率.214(473打数101安打) 21本塁打 54打点

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