青木宣親が打球処理で魅せたプロの真髄 | ヤクルトが好き

青木宣親

2021年6月9日(水)
ロッテ[3-5]ヤクルト(ZOZOマリン)

照りつける夏の日差しから数時間後に吹き付ける風は少し冷たかった。暑さと涼しさの交差するZOZOマリンスタジアムでの野球観戦に胃薬は欠かせない。

この試合は不思議の勝ちだった。12安打に8四球と塁上は賑わった。走者を出せども出せども決定打が出ない。長打はソロ本塁打と二塁打が1本だけと苦しい展開。

ならば細かいところをきっちりと……といきたいところだが、セルフジャッジからの犠打失敗に連続失策。「代打・川端慎吾」という切り札も使わなずじまい。ため息がこだまする。それでも最後は勇者マクガフが1死満塁のピンチから連続三振で勝利をもぎ取った。

そんなもどかしい試合展開だったなかで印象に残ったのは青木宣親だった。この日の青木は4打数ノーヒット。四球で出塁はしたもののバットで結果を出すことはできず。6月1日から続いていた連続試合安打も7で途切れてしまった。

それでも、「この男は欠かせない」と思わせてくれた守備での一幕があった。といっても華麗なファインプレーではない。

5回の先頭打者藤岡裕大が放ったレフト前ヒット。強烈でもなく大きく足を動かさねばならないような難しいあたりでもない。ごくふつうのレフト前ヒットだった。レフトはボールを処理してカットマンに投げ返す。──プロ野球の世界では──なんてことないひとつのプレー。常識的に考えれば打者走者の藤岡も二塁を狙うところではない。

それでも青木はボールをグラブに収めてから間髪入れずに内野へと投げ返したのである。前日からロッテの攻撃陣の「走塁意識」を見せつけられていたからか、それとも点が取れないもどかしさからか、「ちゃんとやろうぜ」というメッセージなのか、理由はわからいけれどもいつも以上に素早い返球に見えた。

ひとつひとつのプレーを雑にしない。手を抜かない。怠慢しない。あたりまえのことかもしれないが、「プロ野球選手・青木宣親」の真髄を見た気がした。

ファンも選手も多くの場合、快刀乱麻の投球やファインプレー、豪快なホームランといった華やかな部分で気持ちが鼓舞され、心を昂ぶらせている。ヒーローインタビューや試合後のコメントでもそういったこをよく聞く。それはもちろんだ。

でもそれだけじゃない。小さな小さななんてことないプレーで、チームやファンに伝えられることもたくさんある。受け取り方は人それぞれだけれども、青木の打球処理ひとつで大事なことを教えられた気がした。

試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000470
※ヤクルト公式HPより

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