2021年8月31日(火)
巨人[10-8]ヤクルト(岐阜)
週末に東京ドームでの試合を終え、向かった先の岐阜で相まみえたのは巨人だった。不思議な感覚が襲う。それも開幕直後には想像することともできなかった首位攻防戦。長良川球場での試合とあり「長良川の戦い」とも称された。
その大事な試合の先発を任されたのは小川泰弘だった。7月に新型コロナウイルスの陽性判定を受け離脱。エキシビションマッチでの登板があったとはいえ、一軍のマウンドは7月3日以来とおよそ2ヶ月ぶりのこと。恐らく球数制限もあるのだろう。マダックスクラスの投球でもない限り5回から6回での交代となりそうだ、と予想していた。
そんな予想は杞憂に終わった。初回に被弾から失点。逆転したにもかかわらず、4回に再逆転を許し2死二、三塁となったところで降板。大下佑馬に後を託した。この日の小川は3.2回4失点、被安打7、被本塁打2(71球)。マダックスは程遠く、エースとはとても言えない内容だった。
勝てば首位という大事な試合、自身の復帰戦、6連戦の頭。勝ち負けはともかくいい形でマウンドを降り、勢いに乗りたかったがそれもかなわない。降板後も度々ベンチにいる小川をカメラは捉えた。もちろん味方を応援しているけれども、表情は冴えない。
「後は任せた」と胸を張って言える内容ではなく、「すいません。後をなんとかよろしくお願いします…」といった状況。笑顔になれるわけがない。
この試合が始まる前、そして試合中、たびたび「エースが戻ってきた」と小川は表現された。本人にも自覚はあっただろう。不甲斐ない投球はできない、と。
石川雅規の後のエースとして小川が長期政権を築くことになる──。8年前はそう思っていた。しかし本当の意味でその日はまだ訪れていない。勝ち頭ではあってもどこか物足りず、一時的にエースと呼ばれる投球はできても、継続することはできなかった。それどころか後ろを振り返れば、奥川恭伸というスーパーエース候補が着実に階段を登っている。
ここまでの小川は15登板(86.2回)で8QS、防御率4.15。一方の奥川は12登板(71.2回)で8QS、防御率3.89。奥川は中10日以上の間隔があり、登板数(投球回数)では小川に劣り、エースと呼ぶには早すぎるのは確かだ。
それでも投球内容は安定し崩れることは少ない。近い将来、チームを背負って立つ存在になる匂いが漂う。つまり「エース小川」と呼ばれなくなる日が一歩ずつ迫ってきているわけだ。圧倒的な存在感で新人王を受賞した小川が本当のエースになれないのは少し寂しい。
今から465年前に起こったとされる長良川の戦いでは、斎藤道三が討ち死にし幕を閉じた。後に天下を統一することになる織田信長は合戦には間に合わなかったものの斎藤道三軍に属していた。つまりこの戦いでは敗軍だったわけだ。
合戦の歴史とヤクルトの歴史がリンクするわけではない。でもきっと、この日負けたヤクルト、そして小川にも再び天下統一のチャンスは巡ってくる。そこで結果を出せば頂点に立つことはできる。小川の意地が見たい。
試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000712
※ヤクルト公式HPより