最高密度の嶋基宏 | ヤクルトが好き

嶋基宏

2021年10月10日(日)
ヤクルト[6-4]阪神(神宮)

冷たい風が吹いてもおかしくない10月初旬の夜。異常気象のせいなのか今年はいつになく暑い。羽織りを持っていってもリュックにしまわれたままという日も珍しくはない。

盛り上がる神宮球場の熱気の凄まじさも無関係ではないように思う。決して満員になることはなく密度はやや薄いけれども、多くのファンから発せられる熱量は半端ない。天王山のこの一戦もそうだった。

息をつく暇なんてどこにもなかった。序盤からピンチとチャンスの応酬。優勝に賭ける両軍の意気込みや執念じみたものがひしひしと伝わってくる。

4時間を超える熱戦でもっとも出場時間(ぼく調べ)が短いながら最高の働きを見せたのが嶋基宏だった。

同点の6回、嶋は無死一塁の場面で代打で起用されると、わずか1球でバントを決めた。

振り返ってみると前の打者である元山飛優が打席に入っているとき、ネクストで準備していたのは西浦直亨だった。元山が出塁しなければ、あるいは三塁打かホームランを打てば代打西浦がコールされていたのだろう。

元山がヒットだったからこその代打嶋。阪神ベンチはもちろんファンも100%と断言できるピンチバンター。そんななか、あわよくば自分も生きるというセーフティー気味のバントではない。まさに自分は犠牲。嶋の思いが伝わってくる。一塁を駆け抜けた後、ベンチへも全力で戻ってきた。

ネクストでの準備もなく、打席ではわずか1球。そして全力での帰還。時間にして2分くらいでも最高密度だった。

楽天からヤクルトにやってきて2年目。立ち振る舞いもファンサービスも最高の男であることはすでに知れ渡っている。試合前後の光景を見たことがあるファンはわかるはずだ。

昨年のファン感謝祭ではヤクルトに来て一番驚いたことは? という質問に「2度骨折したこと」と笑いを誘い、なおかつ楽天とヤクルトの両球団を下げず、誰も不快な気持ちにさせないパーフェクトな回答をしてみせた。わかっている。

とはいえ、成績”だけ”を見ると貢献しているとはいい難い。昨年は20試合の出場で打率1割を下回った。今年もこの日の試合前の時点で14試合に出場し打率.222(9打数2安打)とパッとしない。

数字が残っていないことに加え、今年の12月には36歳になるベテランであり、なおかつ移籍組で外様。そういったことを考えると、この季節には戦力外の声がちらついてもおかしくはない。

それでも嶋のことをそういう目で見るファンは(おそらく)いない。選手たちも度々「嶋さんが〜」と忖度なしのコメントを残してきた。試合に出場する時間や成績だけではないパワー、そして熱量を持っていることが、ありありと伝わってくる。

今年のヤクルトの最高密度はやっぱり嶋だ。

試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000909
※ヤクルト公式HPより

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