投げなかったけれども投げた男・坂本光士郎の大事な役割 | ヤクルトが好き

坂本光士郎

2021年6月18日(金)
ヤクルト[5-2]中日(神宮)

12日ぶりの神宮球場は穏やかだった。程よい風と気温。ビールがないのは残念だけれども野球観戦にはもってこいの気象条件。終盤に雨は降ったのはご愛嬌。この日は屋外球場の良さを文字通り肌を持って感じた。

通算176勝目を挙げた石川雅規の巧みな投球。村上宗隆の日本代表選出御礼弾、オスナの弾丸ライナー、山田哲人の華麗な守備。攻守に渡って”スポーツニュース映え”しそうなシーンがいくつもあった。代打で川端慎吾や宮本丈が出てこなくても十分に楽しめたそんな試合である。

イニング間のキャッチボールから察するに宮本は4回の攻撃時には裏で準備をしていたはず。この回から渡邉大樹が担当していた。

2-2で迎えた4回裏の攻撃。2死二塁で7番サンタナ。チャンスで石川に回ったら代打を出すのか、それとも出さないのか。そんな局面。ここでブルペンでは髭を蓄えた石山泰稚が投球練習を開始する。

もし、石川にチャンスで回ってきたら「代打・宮本(川端)」があるぞ、と思わせることができる球場全体を使った壮大な仕掛けのようにも見えた。ネクストバッターズサークルだけではなく、ブルペンまで使った演出を堪能できるのはセ・リーグだと神宮球場だけ。結果的にサンタナは三振でチェンジになったのだけれども準備からする想像は楽しい。

準備──この日、もっともブルペンで投げたのは、試合では投げなかった坂本光士郎だろう。この日の救援陣で唯一の左腕。ワンポイントだけではなく1イニングもいける。勝ちパターンにあと一歩のところまできたが今は便利屋的存在。だからこそ準備する機会は多い。

よくヤクルトはブルペンで肩を作る回数が少なく進んでいてMLB式だとか台湾式(CPBL)だと言われる。半分正しく、半分ちがう。

勝ちパターンや役割が固定されている選手はたしかにそう。準備するのは登板する回の前の攻撃だけ。でもそうではない便利屋たちは複数回に渡って肩を作っている。この日の坂本は4回だ。5回表、6回裏、7回裏、8回表──7回裏と8回表は投げ続けたわけではなく、一度下がってから再び投げ始めた。

坂本はもしもに備え準備していた。もちろん自分の判断ではなくベンチ(コーチ)の指示のもと。幸いにも”もしも”はなく試合は終了。坂本の出番はなかった。この日のボックススコアに坂本の名前は出てこない。それでも大事な役割だということに疑いの余地はない。

投げなかったけれども投げた男──坂本がブルペンで担う役割は大きい。彼(のような役割)がいるから、マウンドではみんな思い切って投げることができる。

試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000497
※ヤクルト公式HPより

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