わずか1球で見せた宮本丈の存在感 | ヤクルトが好き

宮本丈

2021年6月12日(土)

ソフトバンク[2-4]ヤクルト(PayPayドーム)

エースが投げ、主将が決める。安っぽいドラマにありそうなありがちな設定のようだ。大方の予想を裏切りソフトバンク相手に2連勝。日本に野球くじがあったなら多くの人の怒りを買いそうな2日間だった。

小川泰弘が背負うエースという称号、山田哲人が自ら掴みにいった主将という肩書──。この試合で彼らはその役割に恥じない結果を見せてくれた。7回2失点に2打席連続本塁打。文句のつけようもない。なんと頼もしいことか。

この試合はふたりだけだけじゃなかった。野手では1点ビハインドの7回、無死二塁の場面で代打で登場し、その初球にバントを決めた宮本丈。1死三塁からしっかりとタイムリーを放った中村悠平。

前回の小川の登板試合では9回に悔しい逆転劇を許している。さらにこの日は3連投中だった清水昇がベンチ外だった。嫌な予感が漂ってくる。そんな雰囲気を一刀両断した今野龍太と梅野雄吾。前回の借りをしっかり返したマクガフ。

みんな主役ではなくとも、与えられた役割を真摯にこなし試合を彩った。

なかでも宮本はここのところベンチ外の日も多く苦しかった。一般的には先発ローテーションの投手がベンチ入りから外れるため、野手のベンチ外はそうそうない。6人のローテーションであれば、一軍登録31人からその日の先発をのぞいた5人が外れぴったり26人。

しかし、ヤクルトは奥川恭伸を中10日以上で起用し、外国人投手3人で2枠を回している。そのため6人の先発投手が一軍に登録されている期間は多くない。だから野手がベンチ外になったりもする。その割を食っていたのが宮本であり、太田賢吾といった半一軍の選手たちだった。

一軍にはいるけれどもベンチに入れず、試合に出ることのできない悔しさ。それを与えられた”バント”という役割にしっかりと乗せた。このところチームは犠打の失敗が目立っていたけれども、「俺がいるぞ」と言わんばかりの精密さ。次の回の守備にはつかず出番はこの1球だけ。それでも存在感は抜群だった。

多くの選手はアマチュア時代に4番をはじめとしてチームの主軸だった。バントを命じられたことが少ない選手も多い。宮本だって学生時代は「4(3)番・ショート」という花形プレーヤー。大学選手権では史上初のサヨナラ満塁本塁打も放っている。でもプロ野球の世界での役割は違う。それを受け入れ、一軍定着をはたすために地味な役割でもしっかりとこなしている。

エースや主将といった肩書がなくてもそれぞれが背負っているものがある。試合を作るのは主役だけではない。それがふんだんに詰まっていた。

試合結果:https://www.yakult-swallows.co.jp/game/result/2021000490
※ヤクルト公式HPより

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